街角魔女サマ始動!

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そこは暗黒の室内。 ひっそりと灯の点された蝋燭。微かな炎がぼんやりと窓に人影を映し出す。 影はワイングラスを片手にゆっくりと窓へ身を寄せた。 黒くうっすらと見える影…だが、純白のレースがさらりと夜風に靡いた時。重厚なカーテンの傍ら、しなやかなその姿がはっきりと見えた。 豪華な黒衣に身を包んだ妖艶な美女だ。 彼女はそっとグラスを口へと運ぶ。 「…遅いわね」 そう呟かれた声は美しく、赤く彩った口元からは小さな溜め息が漏れた。 冷たく月を見上げ、手にしたグラスを弄ぶ。 そしてもう一度溜め息をついた時、彼女はそっと音もなく闇の中へ溶けこんでいた…。 同じく静寂の真夜中。 その足音は闇夜に高々と響き渡った。 「あー…もう…何だっていきなり…!!」 半ば息を切らし、途切れ途切れに繋いだ言葉は愚痴以外の何物でもない。 若い青年は右手に半透明なビニール袋をぶら下げ、必死に街頭を駆け抜けていた。 チリンチリン… 彼が走る度に聞こえる微かなその音。首元で光るそれは、黒いベロアのリボンにつけられた銀の鈴だった。 「くそー今日は休みなのに…」 めそめそと鼻をすすりながら、青年は白い階段の前で立ち止まった。 大きく息を吸い込み、今度は長くそれを吐き出す。切らした息を整えて、彼はゆっくりと階段に足をかけた。 この後の展開が想像できる…嫌だなぁ… と内心何度も溜め息をつきながら、階段を登りきった。 「短っ…いつ来てもこの階段短い…本当にいいのかなぁ……こんな民家で」 顔を上げた先に見えるものは、シンプルな茶色の一枚扉。 見下ろした後ろには小さな民家がずらりと立ち並ぶ。 扉の周りを見れば、明るいサーモンピンク色の壁面に、小さな表札。郵便ポストは扉にそのまま設置済み。 そしてすぐ隣りにも全く同じ扉が二つ、連なっている。 どこからどう見ても、『アパート』 少しお洒落な造りにはなっているが、明らかに小さな一人暮らし用アパートだ。 だがこの中に『彼女』はいる。 認めたくはないが此所に…彼が長年仕えてきた『主』が棲んでいるのだ。 「とにかくジャスト30分…!俺頑張った!!」
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