桃園の誓い

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呂布「むっ」 体制を崩さない様、抱き着く様に俺の頭にしがみつく。 あぁ。目の前に広がるまな板な胸(近すぎて逆に見えない)鼻を突く幼い少女の香り。軽く幸せ。軽く自己嫌悪。 だが。そんな些細な幸せも束の間だった。 呂布「むー」 頭を潰す勢いで力を込めてきやがった。 俺「やめてくださいしんでしまいます」割りと本気で。 呂布「誰が勝手に履かせろと言ったー」 怒っている様で若干嬉しそうな声。 その柔らかい声を聞いて理解するこれは呂布なりの照れ隠しなんだな、と。 それが妙に嬉しく思ってしまう自分。これがツンデレと言うものか。 この体制も他人から見れば本当に抱き締められてる様に見えなくもない、かね。 ……と。変な妄想考えてる間に、どんどん力が強くなってきやがる。 俺「わ、悪かったよ。お詫びに草鞋をプレゼントするって」 呂布「ぷれぜんと?」 俺「受け取って下さいって意味。可愛い呂布にぴったりと似合いそうだ」 呂布「っ」 更に抱き締める力が強くなったと思うと。すぐに緩む。 想像出来るぜ。 たぶん。顔を真っ赤にしている呂布が固まってるんだろ。可愛いじゃないか。割りと本気で。 俺「で。受け取ってくれるかね?」 呂布「………」 暫くの沈黙。返事を待っていると。 呂布「……は、履かせろ」 ぼそりと。精一杯の照れ隠しが聞こえた。 俺「うぃ」 返事を返し。呂布が今履いている古くなった草鞋を脱がせ、新しい草鞋を履かせる。うむ。ぴったりだ。 俺「次こっち」 もう一本の片足を指でちょんと突ついて上げる様に頼む。 呂布「ん」 俺「ほいっと」 両足に装着完了。立ち上がり呂布の顔を見てみる。 呂布「………」 その場で二、三回足を踏み鳴らし。 呂布「むふー」 にんまりとしながら満足そうな溜め息をつく。そして。 呂布「…志郎!ありがとうっ」 天使顔負けのスマイルである。 俺「お、おう。良いって事よ……?」 何故だか。今度はこっちが無性に照れ臭くなり、なんとなく手に持っていた古くなった草鞋を見てみる。 古い草鞋はもうボロボロだった。このプレゼントも丁度良かったのかも知れないな。 俺「この草鞋、どうするんだ?」見せると。 呂布「まだ使えるから持っとく」俺の手から取り、大切そうに懐にしまい込んだ。 呂布「……これは俺様が…ちちから初めてもらった物だからな」 歯切れが悪い。 ちち……父……と言う言葉に違和感を覚えた。
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