Re:Ⅰ Episode.

2/14
前へ
/19ページ
次へ
「第一皇子、柚慧であるか。先刻、貴様の第二皇子暗殺未遂で指名手配が確定した、」 軍人ではない。 柚慧は腰を低く、周りを囲む紅い軍服をみる。 国家暗殺員か──では、父が内密に確定したのだろう。 誰が暗殺未遂だと、唇を噛むが。 「生け捕りの命令だ。反抗を認められた場合この場で処刑する、」 地を蹴り、高く跳躍した。 紅い軍服はすぐさま動き、蹴落とされる。 ついた地面に受け身をとれば、刹那に立て直した。 「反抗をするな、」 「……冗談、」 誰に口をきいているのか、柚慧は乾いた下唇を舐める。 思いのほかざらついた、そうして息を吐く。 「父の命令か、」 「答える義務はない」 飛んだ刃物に首を横へ、右に避けた。 踏み込み、今し方口を開く紅い軍服の鳩尾に滑りこむ。 素手とは少々心許ないが──昔から命を狙われる身だ、護身術にはたけている。 腕を振り上げ顎下を狙い、体重をかけ押し倒した。 動く多数の気配に、彼の頸動脈に手をかける。 「動くな、」 言えば、数メートルの距離で止まった。 「──二度はない。父の命令か、」 親指で圧迫をかけ、にじり佇む奴らを見据える。 同様な軽装だが、僅かに繊細な模様が刻みこまれていた。 胸元に映えるそれは、どこかで見覚えをする。         ・・・ どこか──いや、なにか。 不意に風が舞い、目を見開いた。 「左様でございます。勅命のため、我等が派遣されました」 右手を伸ばし、彼は柚慧の下でうずくまる同胞を指さす。 不自然に起こる生暖かい風は、常に旋回しシャツを奮わした。 「……お前ら」 毛穴が開き、思わず腕をなぜる。 そうしてふと、先程までいた彼がいないことにようやく気づいた。 「っ、」 「彼は、此方です」 何故──否、理解する。 彼の腕には閃光の鋼玉が握られ、それは波動を持って大地を揺るがした。 「ルシエル、」 .
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加