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博明と亜紀の目的地は
近代的な設備で、65階建てのメトロポリスタワーなるビルだった。
ここの10階に博明のオフィスがある。
ミュージシャンの比率よりもハッカーの能力が買われたことによるコンピューター関係の仕事がメインになりつつある博明の仕事場である。
半年前までは自前のスタジオルームが自らの拠点だったが、その場所は手放した形だ。
亜紀はビルの受付嬢の仕事に内定したらしく、この日は初出社というわけだ。
本人いわく三度目の出社らしいのだが、三度目にして迷うとはなかなかの方向音痴極まりない。
駅の出口が違えば、わけがわからなくなるらしい。
行き先が同じな博明は亜紀と一緒にビルに向かう。
その間にたわいもない話で盛り上がった二人だが、博明は異様な感覚を理解しようとしていた。
それは、自らが製作したプログラムキャラクターと同姓同名、そして何よりも初対面のはずなのに以前から知り合っていたかのような親近感を感じていた。
ビルの目の前に着いた二人。
博明の方から切り出した。
「よかったらこういうものなんで、また連絡してもいいですか?」
博明は名刺を差し出した。
特別な拒否反応もなく亜紀も名刺を差し出した。
二人はビルに入り、亜紀は一回のオフィスへ。
博明はエレベーターに直行した。
別れ際の亜紀の後ろ姿を見て、ますます初対面とは言い難い親近感を感じる博明だった。
その日の夕方、博明は亜紀にメールを送った。
それはごく普通な食事の誘いである。
亜紀からの返信は意外に早く、5分も待たずに送られてきた。
食事会は次の日の夜18時に決まった
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