VOL.05

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待ち合わせの夜18時。 そのギリギリまで雨が降っていたのだが、博明が待ち合わせ場所に着いた頃に雨は止んだ。 亜紀は博明が着いた5分後に到着。 二人は18時より少し前に合流することができた。 何の変鉄もないファミリーレストランに入る二人。 エスコートしたのは博明だ。 博明には企みがあった。 もちろん一人の女性として亜紀に興味はあったのだが、それよりも博明は自身が抱いていた疑問を投げ掛けたい思いの方が強かった。 しかしながら、正直どうやって亜紀に聞くかは何度も考えたが方法が見つからない博明だった。 食事会はたわいもない男女の話で三時間ほど続いた。 亜紀としては、男性に食事に誘われた経験があまりないためか、いわば完全に恋愛モードに入っていた。 博明も会話しているうちに、亜紀の人間性に惹かれていった。 夜21時頃に二人は店から出た。 博明と亜紀が、お互いにもっと接近したいという想いが食事会の前より強くなっていたのは火を見るより明らかだった。 帰り道の駅まで向かう途中、それは唐突に会話の中に出てきた。 「彼女……とかいるんですか?」 意外にも切り出したのは亜紀からだった。 博明は何事にも外側から分析する癖がある。 故にこの唐突な言葉はかなり意外だった。 博明は自分から言わなければ二人の関係が進展することはないだろうと踏んでいたからだ。 「いや、いませんよ」 博明は亜紀に返した。 しばらく沈黙が続いた後に 「明後日の夜は暇ですか?」 切り出したのは博明だった。 そして二人は二日後の夜の18時、同じ前の前で会う約束を交わした。 夕方まで降っていた雨が嘘のように、その雨跡は街から完全に消えていた。 そして二人は大勢の人混みの中、駅に吸い込まれていった。
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