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次の日の朝早く、博明はオフィスにいた。
片付けなければならない仕事が増えたためだ。
その仕事の依頼メールの一つに、博明は不安な気持ちを隠せなかった。
差出人は
山田直勝
半年ぶりである。
6ヶ月前に彼の現実世界に行ったとき以来だ。
そのメールの内容はこうだ。
「久しぶりだな!山田だ。いきなりだがまた問題が起きそうだ。こっちの世界からそっちの世界にまた侵入者が入った模様。
しかも、今回はかなり大人数の人々が侵入した模様!
あらかじめそっちの世界のプログラムをハッキングし、銀行システムを初めとしてあらゆるシステムを自らに有利に働くように改竄してから乗り込んだ模様。
前回のように渡部だけが謝って入ったのとは次元が違う!
明らかにそっちの世界、つまりはおれの作った世界をハッキングし、自分のものにして悪用しようとする集団の仕業さ!
この集団は詐欺師だ!
こっちの世界で有数の犯罪グループが手を回している。
¨永遠の幸せを約束する!¨を売り文句に会員を日々増やしている。
会員はそっちの世界に、つまりはおれの作った世界に生身のままに転送される。
半年前に博明はこっちに来たからわかるだろ?
これは危険なことなんだ。
これよりおれも様々なサポートを得てチームを作り対応にあたる。
博明も後藤や神山と連絡を取り協力してほしい。
以上 」
これがメールの内容。
はっきり言えば、他の仕事よりもこの件に完全に頭が持っていかれた。
半年前、いやそれよりもさらに半年前だから、ちょうど一年前か。博明が山田に初めて会ったのは。
博明はそれから昼過ぎまで他の仕事を集中的に仕上げ、昼食を取るために外出すべくエレベーターに乗り一階エントランスへ降りた。
ビルの出口に向かう途中、受付に亜紀がいた。
目が合った時に亜紀が軽く手を振った。
博明は笑顔で返した。
外は昨日の激しい雨が嘘かのようなくらいに晴れ渡っており、厳しい残暑さながらな光景だった。
これから起こる出来事など予想も付かなかった。
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