プロローグ

5/9
前へ
/36ページ
次へ
「え…沙樹が、死んだ…?」 彼女と別れて1週間経った日だった。 久し振りに鳴った携帯電話に出れば、聞いたのは沙樹と共通の友人であるヤツからの…彼女の訃報だった。 俺はとても信じられなかった。 「い、今、何処に…っ…」 「“落ち着け…中央病院だ。お前も来い”」 あまりにも…冷静過ぎると言って良いほど、落ち着いた友人の声。 俺は「すぐ行く」と言って電話を切り、車で病院に向かった。 病院に着けば、電話を掛けて来た友人…光(ひかる)が自動扉の前で待っていた。 「沙樹の…遺体は…っ…」 「…霊安室。コッチだ」 信じられなくて、声が震えた。 電話の時と同じく、光は落ち着いて答えた。 彼の眼鏡越しに見えるその目には、薄らと涙が滲んでいた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加