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通された霊安室の前のソファで、沙樹の両親が肩を抱き合って泣いていた。
「おじさん…おばさん…」
「!優君…っ…来てくれたのね…会ってあげて…沙樹、きっと喜ぶわ…」
沙樹の母…直(なお)さんは、泣き腫らした顔を上げてそう言った。
父の彰(しょう)さんは、膝の上で拳を硬く握り締めて、泣くのを堪えているようだった。
俺は2人に小さく頭を下げて、ゆっくり霊安室の扉を開けた。
「まさか、こんな事で全員がそろうなんてな…」
俺の後ろから霊安室に入った光が呟いた。
「!優…」
「優…沙樹が、沙樹がッ…」
「久し振り、だな…このメンバーがそろうの…」
部屋の中に居たのは、どれも見知った顔。それもかなり親しい3人の友人達だった。
彼等も光も、俺と沙樹の共通の友人だ。
最初に俺に気付いたのは健輔(けんすけ)。
号泣しているのは稔哉(としや)。「トシ君」と中学時代から呼んでいる。
苦笑しながら言うのは悠(ゆう)。皆は俺と名前が被るから「須田君」て呼ぶけど。
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