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「だれかっ!そいつを捕まえてくれ!!万引きだ!!」
「ん?」
不意に後ろから大きな声が聞こえてきた
振り向くと
フードを被り、鞄を抱えた男が客の波をかきわけて、こっちに走ってくるのが見えた
(最近よくみるな、こういうの)
冷静に考えれば、ここでオレがとるべき行動は見過ごすことだろう
なんせ俺は他人の為に自ら危険に飛び込むようなバカな善人じゃあないしな
でもまぁ
最近は歩くだけで暇だったから妙に体を動かしたくなった
たまにあるだろ?
まぁつまり
俺は男の進む道に立ち塞がる
俺に気付いたのか
男が灰色のパーカーのポケットからナイフを取り出す
(たかが万引きで普通そこまでやるかよ)
あー怖い
最近の万引きは凶悪だ………
手に持っていた鞄を下に置き
改めて男の方を見る
(バカか、こいつ)
男はナイフを見せつけるかのように前に突きだしながら走ってくる
ナイフ持っていようが
チェーンソー持っていようが
真っ直ぐ突き出して向かってくるってことは
「かわしてください」って言ってるようなもんだ
男がナイフを突き刺そうとする瞬間
体を少し横に反らしてそれをかわし
ナイフを持つ手を左手でつかむと
男の勢いを利用して鳩尾に右拳をたたきこむ
「ぐぉぁ」
よっぽど痛かったのか男はそのまま気絶して
その場に倒れこんだ
「少しやり過ぎたか………」
とりあえず
反省はしておこう
久しぶりの感覚に少し高揚しながらも
面倒なことに巻き込まれないように、とっととその場を離れた
(思ったよりも鈍ってないな)
去って行く足取りが少しだけ軽かった
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