始まりの逃亡

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俺が決意を固めてから時がたち 意外な形で 《隔離区域》を抜け出すチャンスは訪れた より安全に誰にも見つからない、抜け出すには絶好のチャンスだ 日本の抱える最大の問題である隔離区域の人々を 最悪、武力行使をしてでも捕まえ 更正施設へ送り 隔離区域の存在を跡形もなく消してしまうという名目の 《隔離区域強制退去法案》が執行されたのだ 隔離区域に住まう人々による犯罪行為に悩まされてきた市民が立案したものが可決された 隔離区域根絶を目指す運動が実現されたものだ 逮捕された犯罪者の多くが 何らかの形で隔離区域と関わりがあることが証明された今日 隔離区域が根絶されれば日本は平和になると考えたらしい 少数の人を、多数の人を救うための犠牲にするということだ 誰かが得したら誰かが損するこの世界では当然のことだ かくして さまざまな人々の合意と協力の上、執行された作戦は わずか1日もたたず、幕をとじた 政府の惨敗という形で 隔離区域の人々は 事前に潜りこませていた工作員を使い “何者か”の協力の元、ヘリや政府本部に爆弾をしかけ 政府側の突入と同時に爆破した その結果 政府側は 多数の人々が死傷を負うこととなった 後に聞くところ、派遣された特殊な部隊に隔離区域の多数の人間は更正施設送りにされたらしいが、結果としては隔離区域は残ったのだ くしくも、その事実を国民へと広めたのは 政府が国民の支持を得るために用意したテレビの生中継であった その日はよく晴れた日だった 誰もが 変わらぬ日常の幕開けと思ったに違いない 誰一人として こんな結果になるとは 思いもしなかっただろう
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