始まりの逃亡

4/7
前へ
/79ページ
次へ
足元を埋め尽くす家屋の残骸、黒煙の臭い、血の臭い、悲鳴、人の骸。 そんな中 パラパラと崩れ落ちるビルの傍に ある男が平然と立ち尽くし 興奮し携帯のカメラを向ける愚鈍な市民に向けて、静かに響く声で語っているのを逃げている最中に目にした ──────これが犠牲の上に造られた国の崩壊。その序曲 今も、そして、これからもこうして生まれいずる憎悪の火種は、やがて業火の如く、全てを焼き尽くす 誰にも止められない 人は淵に立たねば気付くことができない 大切なモノは何なのか 日常がいつまでも自分の傍にあると信じて疑わないこと それはいつ失うか分からないこと 奪う者は常に存在すること 簡単なのだ、呆気なく、全てを一瞬で失ってしまうこともある そしていつか後悔する。自らの過ちを。それが人だ────── 泣き叫ぶ声 狂ったような笑い カメラのシャッター音が入り交じった隔離区域は 俺が見てきた中でも最も滑稽だった
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加