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フェンスを乗り越え、ついにこの時がやってきた。
ひゅー…、と冷たい風が頬をかする。
龍ちゃんのコートに暖めてもらった体がまた冷えそうだ。
「怖い?」
「少しだけね。龍ちゃんは?」
「俺も少しだけ」
「でも龍ちゃんと死ねるなんて幸せだよ。僕龍ちゃんが全てだから」
「なんか…照れるんですけど」
「最期だもん、言っておきたいじゃん」
「…、じゃあ俺も言おうかな」
「…?」
夜だけど、照れた龍ちゃんの表情がはっきりと分かる。
俯いて恥ずかしそうに頭をポリポリかく龍ちゃんは、静かに顔を上げた。
「俺…、…知念くんのこと愛してるから」
そして、最高の言葉を僕にくれたのだ。
「龍ちゃん…嬉しい」
「うわっ!やべぇっ超はずいんですけど!」
「僕も愛してる!」
僕よりも大きな龍ちゃんに抱きつく。いつも龍ちゃんに抱きしめてもらうとポワポワした優しい気持ちになれる瞬間が大好きだった。
ゆっくりと離れた僕らは、お互いを見つめ合い、決心した。
強く手を繋ぎ、一歩を踏み出す。
「龍ちゃん…僕たち間違ってないよね」
「うん」
「…あ、星がすごいよ」
「本当だ、綺麗だね」
「今から僕たちあれになるんだねっ」
「そうだよ、一緒に星になるんだよ」
「なんか…未知の世界にワクワクしちゃうな」
「俺も」
しばらくの沈黙の後、僕らは最期に甘いキスをした。
「じゃあ…いくよ」
「…うん」
僕たちが認められないというのなら、
「せーの、でいくからね?龍ちゃんも一緒だからね?」
「わかってるよ、大丈夫」
ぼくらはほしになる
『せーの…!』
この夜空に輝くほしたちに
'これからは、ずっと一緒だね'
最期に見た空は、哀しいほどに美しいものだった。
END
お題提供サイト様
chien11
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