神に愛された男

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「働く? ここはサークルじゃないんですか?」  サークル活動に働くという言葉は当てはまらないだろう。 「違うよ。実は理事長とは縁があってね。活動の拠点としてここを使わせてもらってはいるがサークルではないんだ」  サークルでないにしろ働くというのは違和感がある。 「私の実家は、自分で言うのは気が引けるが、結構名の知れたシャーマン一家でね。全国から様々な依頼がくるんだ。その中のいくつかが私の下に回ってくる」  なるほど、ここは支店みたいなものなのか。  しかし、俺に何ができるんだろう。俺は妖怪退治などできんぞ。 「フフフ、勿論君に魑魅魍魎の始末をしてほしいわけではない。客の応対などの雑用で構わない。ここで働いてほしいのは都合がいいからさ。今から何をしようが君の状況が良くなることは有り得ない。それよりかは私の傍にいた方が安全だと思うんだ。君が生きていけるよう最低限の生活は保証するよ」  悪くない条件だ。今はただ生き延びることだけを考えればいい訳だしな。  それに人に借りをつくる事は俺のポリシーに反する。貧乏神を追い払ってもらう上に養ってもらうと、雑用では等価にならないような気もするが、相手が納得しているんだ、問題ないだろう。 「三食付きの安全が確保された仕事場だよ。どうする?」  その言葉で俺は決心した。 「働きます!」  俺の言葉を聞いた神代は、美しいなんて表現が陳腐に感じるほどの笑顔で答えた。 「"怪奇現象相談所"は君を歓迎するよ」
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