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いつの間にか太陽は沈み、夜の闇が町を侵している。
考え込んでいる内に大分時間が経っていたようだ。
もし今まででの苦労が横に並んで歩く貧乏神のせいだったのならば、その苦労は今日で終わりだ。そう考えると脱力したくなってくる。
一刻も早く家に帰りたい、と歩を速める。
「なんだこれ‥‥‥」
家が朱く燃え上がっていた。
さっきまで町を照らしていた夕焼けのように朱く、強く光っている。まるで夕焼けが再び姿を現したかのようだった。
夕日は俺を照らして闇で真っ黒に染まった町から浮かび上がらせた。
「お前のせいか!」
俺は隣にいるガキを睨みつける。
しかしどうしたことか、ガキも怒ったようにこちらを睨み返す。
「お兄ちゃんがあのお姉さんと仲良くするからだよ! 僕はお兄ちゃんと離れたくないのに!」
そういえば今日は全く喋っていなかったが拗ねていたのか。
俺は膝をついて呆然と朱く燃え上がる我が家を見る。
今日が終わりなんて大間違いだった。今日こそ始まりだった。
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