神に愛された男

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 貧乏神が俺の前に現れたのはほんの2日前のことだ。  何時ものようにボロアパートに帰ってきた俺は部屋の隅に見慣れぬ影を発見した。  夜の闇の中、電気代を気にして電気を点けない俺は、目を凝らしてそこにあるものの正体を見極める。 「子供?」  俺がそう呟くと、その子供は驚いたようにこちらを見上げた。 「お兄ちゃん、僕が見えるの?」  こいつ、何を言ってるんだ?  幾ら電気を点けてないと言っても、月で部屋中が見渡せるほど明るい。見えない訳がない。  そんなことよりもこの子供が何処から来たのか、どうやって入ったかが重要だ。  時計なんてものは家にないから正確な時間はわからないが、バイト終わりだから深夜2時頃だ。間違っても小学生くらいの子供が一人で出歩いて良い時間じゃない。  そしてこんな子供に簡単に侵入される我が家のセキュリティーが心配だ。幾らボロいからと言ってもこれはひどい。このままでは朝起きると泥棒とご対面、なんてことも有り得る。  俺はできるだけ怖がらせないように、慈愛を込めた笑顔で子供に問いかける。 「ああ、ちゃんと見えているよ。ところで君は何処から来たのかな?」 「本当に見えてるんだ。ワーイ、これでお兄ちゃんと話せるね」  なんだかよくわからないがはしゃぎ始めたガキ。  質問に答えろよ、と心の中で毒づきながら再度問う。 「君、家は何処?」 「僕のお家はここだよ」 「ここは僕の家なんだよ。君の本当のお家は何処かな?」 「だからここだよ」  駄目だ、話が通じない。  だから子供は嫌いなんだ。 「お父さんとお母さんは何処にいるの?」 「パパとママは遠くにいるよ」
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