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「その遠くは何処なのかな?」
「遠くはね、お空だよ」
俺は少し後悔する。
遠くにいるというのはつまりそういうことなのだろう。
「ああ、そうなのか。それはその、二人とも元気だといいな」
「うん。前あった時はとっても元気だったよ」
死んでないのかよ、つーか親が空に居るってどういう状況だ、とツッコミたくなったが、口には出さない。
勘違いして変な気をつかってしまった。
「君はどうやって此処に入ったんだ?」
幾ら話しても埒があかないので話題を変えることにした。
「えっとね、ドアからだよ」
「鍵がかかってたはずだけど?」
俺が帰ってきた時には確実にかかっていた。先程鍵を開けて家に入ったのだから間違いない。
「うん、かかってたよ」
「じゃあどうやって入ったのかな?」
「通り抜けたんだよ」
家のドアには一切入る余地はない。子供どころか昆虫ですら入ることは不可能だ。ただ羽虫が入れないかどうかといえば微妙であるのは悲しいところだが。
「そんなの無理だろう。本当のことを言ってくれないかな」
「本当だもん!」
ガキは大きな声で反論しながら、パタパタとドアに向かって駆けていく。
近所迷惑だから静かにしろ。そう言ってやろうと考えていた俺は思わず言葉を飲み込む。
ガキの姿がドアの向こうへ消えたのだ。
ドアから満面の笑みで顔を出したガキは、自慢気だ。
「本当でしょ」
「お前、一体‥‥‥」
俺は呆然として問う。
「僕? 僕はね。神なんだよ」
神を名乗る少年は胸を張る。
「神? 神が何故ここに居るんだ?」
俺は少年の言うことをすんなりと受け入れた。ドアをすり抜けた時点で人間でないことは疑う余地もなかった。
「それはね、僕がお兄ちゃんのことを気に入ったからだよ」
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