神に愛された男

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 ガキの正体を知った俺はなんとか追い出そうと必死だった。 「出ていけ! ここはお前のいるところじゃない!」 「やだ。僕はお兄ちゃんとずっと一緒にいるんだもん。お兄ちゃんのこと大好きなんだもん」 「俺はお前のことが嫌いだ」  人に好かれてこれほど嫌な気持ちになるのは初めてだ。まあ、人ではなくて貧乏神なんだが。 「お兄ちゃんが僕のこと嫌いでも、僕はお兄ちゃんのこと大好きだからいーの」 「俺が良くねーんだよ!」  声を荒げて反論する。 「おい、うるせーぞ!」  隣のおっさんが壁越しに怒鳴りつけた。 「怒られちゃったね」 「お前のせいだ!」  隣から壁をドンと叩く音が聞こえる。  今日のところは諦めよう。  俺は無邪気に笑うガキを睨みつけてから蒲団に入る。  明日だ。明日はちょうど休みだ。何が何でもこいつを追い払ってやる。
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