神に愛された男

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 目が覚めてすぐに映ったのは、腹立つくらいに笑顔で俺を見下ろす貧乏神だった。  夢じゃなかったのか‥‥‥。 「おはよー、お兄ちゃん」  俺は無言を貫き通す。そう、貧乏神なんてこの世にはいない、いたとしても今日までの付き合いだ。  関わってしまったらお仕舞いだ。 「お兄ちゃん、どうしたの? また見えなくなっちゃたのかな?」  幻聴をなお無視して服を着替える。  どうするかな。とにかく片っ端から寺や神社に行くしかないか。  服を着替え終わった俺は背中にしがみついている何かを無視して朝食を摂る。  朝食である六枚入り食パンの半分を食べ切った俺は急いで外に出る。  御祓いというものはいくら必要なのだろうか。そんなことは知らないのでとりあえずバイトで貯めた金をすべて持っていくことにした。  まあ、二十万もあれば十分だろう。  最初に尋ねた寺で俺を出迎えてくれたのは人の良さそうな坊さんだった。俺に気づくと穏やかな笑みを湛えながら近づいてきた。 「どうされましたか?」  俺はここに至るまでのあらましを伝えた。  話を聞き終えた坊さんは申し訳なさそうに俺に言う。 「一般的に仏教では御祓いという観念がないのですよ。申し訳ありませんが力になれそうにもありません」 「そうですか……」  俺はガックリと肩を落とす。  そんな様子を見てか、坊さんは助言をくれる。 「そういうことなら神社に行ってみるのもいいかもしれません。それに仏教の中にも御祓いを行う寺院もあるようですよ。今回はお役に立てず申し訳ありません」  俺は寺を後にして神社に向かった。
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