神に愛された男

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 俺が最後に頼ったのは‥‥‥。 「ようこそ曝し教へ。私達は貴方を歓迎します」  宗教の創設者が見事な禿頭をさらして挨拶した。  如何にも怪しげな宗教だ。何だよ曝し教って。つーかハゲが流行ってんのか。 「貴方も曝し教の方針に興味を持たれたのですか?」 「え、ああ、まあそうですね」  何をしているのかは知らないが適当に答えておく。 「そうでしょうとも。素顔を、つまり本当の自分を曝け出すことこそが神に対する礼儀。化粧によって本当の自分を隠すなど言語道断。今は数少ない者しか私の考えに同意してくれていません。しかし、きっといつか、世界中の人が賛同してくれるでしょう。神の前で本当の自分で居られる者だけが、神の恩恵を受けることができるのです」  それはただのお前の好みだろ。  駄目だ。いくら切羽詰まっているからといっても、こんなとこに頼るんじゃなかった。  大体、ガキに頭叩かれているのに気付かないような奴を頼れるわけがない。 「おー、神よ。私の全てを曝け出しましょう」  そう言うと徐に服を脱ぎ始めた。 「出るぞ、スッピン様の全曝しだ」  それはただの変態行為だ。  俺はガキを引き連れて変態の巣窟を後にした。 「ツルツルもっと触りたかったなあ」  あそこは子供が居てはいけない所だ。教育上良くない。  それにしてもどうするか。寺も神社も頼れない。新興宗教なんて以ての外だ。  もうこいつを受け入れるしかないのか。  帰り道はそのことばかり考えていた。  家に着いた頃には、俺の気持ちは決まっていた。  貧乏神が居ようと関係ない。俺は何としてでも金持ちになってやる。  そう考えると不思議とすっきりした気持ちになった。俺はガキを見据えて不敵に笑う。 「どうしたの、お兄ちゃん?」  俺は答えない。心の中で強く誓う。絶対に貧乏神になんかに負けない。  誓いを立てたところであることを思い出す。 「しまった、金持ったまんまだ」  俺は慌ててポケットに手を入れる。 「な、無い!」  どんなに探してもない。ポケットの奥まで手を突っ込むが、底が見当たらない。 「馬鹿な。いくら安物でもポケットに穴が空くなんて有り得ない‥‥‥」  俺はガキを見た。  ガキは俺を見てにんまりと笑った。 「お前出ていけー!」 「お前が出ていけ!」  隣りのおっさんの罵声が聞こえた。
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