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なんとか振り切らなきゃと暴れてみるが、しっかりと組まれた腕は解けない。
どんどん後ろに引きずられていく。
どうして分かってくれないの?
僕は先輩の恋人じゃない。
僕が好きなのは先輩じゃないんだ。
「僕は……好きな人が、いるんだ」
先輩の力に抗いながら、絶え絶えに訴える。
「分かってるよ、俺だろ」
何でそんな風に思えるの?
こんなに嫌がってるじゃないか。
先輩は結局僕なんて見てないんじゃないか。
「好きなのは……凌、だっ!!あんた、じゃない!!」
精一杯声を荒げて、先輩の耳に届くよう叫んだ。
やっと声が届いたのか、腕は外れなかったが引きずっていた力は止まった。
先輩はしばらく動かなかったし、何も言わなかった。
……伝わった?理解してくれた?
しかし、僕の考えはいつだって甘い。
「……脅されてるのか?」
「え?」
「言いたくないこと言わされて…」
何を言ってるの?
「可哀相に……今助けてやるからな」
「たす……ける?」
ニヤリと先輩は口元を歪めた。
「そいつが居なくなれば素直になれるだろ?」
スルリと離れた先輩に慌てて縋る。
「やめてよ!!」
凌に手を出さないで。
バカだ……軽はずみな事言って凌を巻き込むなんて。
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