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絶対に凌に危害は加えさせない。
もし何かあったら……
今度こそ会わせる顔が無い。
「いい加減にしてください!僕は脅されてない、自分の意志で凌がっ…っん」
呼吸ごと大きな手のひらに塞がれる。
……くる、しい
引き剥がさなきゃ。
両手で爪を立てる、もう遠慮なんかしない。
僕が一番考えるのは、大事にすることは決まってる。
「ってぇ」
先輩の手の甲の引っ掻いたところには血が滲んでいた。
手は離れなかった。
暴れるのをやめない僕にイライラとしたのだろう、先輩は無口になり…
口を塞いでいるのとは逆の手で首を絞めてきた。
「……っか!!」
頭が痺れるようにぼんやりしてくる。
息が…
入ってこない酸素に金魚みたいに口をパクパクさせる。
だめ…
首を絞められ口も塞がれ、目に映る光景が黒くなっていく。
意識が……遠退く……
「少し黙ってろ」
気を失ってしまったら何をされるか分からない。
凌に危害を加えるのを止められないし、僕自身に何かをされるかもしれない。
駄目なのに……
解こうともがいていた手に力が入らず、ダラリと落ちた。
……凌、どうか凌には何もしないで。
意識を失い閉じた目から涙が一筋こぼれた。
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