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――……
さらり……
顔にくすぐったい感触。
沈んでいた意識が浮上してくる。
「気がついたか」
先輩の手から梳いていた僕の髪が落ちる。
ここは……先輩の部屋だ。
ベッドに横たえられていたが、痛むところもなければ、拘束されているなんて事もない。
何もされていないことに『なぜだろう?』と怪訝になりながら、上体を起こした。
よしよしと頭を撫でてくれる。
凌と比べると劣るが不快なわけではなかった。
あぁ……そうだ。
片想いってことに関しては、僕達は同士なんだ。
好きなのに受け容れてもらえない。
拒否を認めたくない。
そんな気持ちが分からないわけではないのだ。
「……痛いのか?」
聞かれて否定の意味で首を横に振った。
「何で泣くんだ?」
切ないからだよ。
こんな僕を先輩は好きでいてくれている。
たしかに一方的かもしれないけれどありがたいことだ。
それでも僕は凌が好きなんだ。
先輩を好きになれれば楽なのに、気持ちはどうすることも出来ない。
先輩を受けとめてあげられない。
「ごめんなさい……」
逃げられれば誰だって傷つく、憎しみに変わることだってある。
ストーカーなんて決め付ける前に、気持ち悪がって避ける前に、僕はちゃんと向き合わなきゃいけなかったんだ。
好きだっていう気持ちに誠意を持って…。
「先輩……ありがとう」
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