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熱い手のひら……離すまいと握られている事に頭が追い付かない。
だって、僕は凌に勝手にあんなことして逃げ出したのに……。
「俺以外を呼ぶな」
どうしてそんな僕を独占するようなこと言うの?
僕は……誤解しちゃうよ?
求められてるんだって、もっと好きになっちゃうよ?
気をもたせるだけなら甘い言葉を言わないで。
言うんなら……責任、取らせるんだからね。
「連れて帰る。二度と叶斗に近づくな」
先輩を睨み付けて、僕を守ろうとしてくれる。
手をひっぱられ、部屋から出ようと連れていかれる。
心配してくれたし、迎えに来てくれて、助けてくれた。
それはどうして?
ドアを潜り抜け、扉が閉まる寸前に先輩を振り返った。
先輩は僕をじっと見ていた。
「悪かった」
それだけの言葉で胸が一杯になった。
すぐにドアは閉まったからもう確認はできないけれど、先輩は笑ってくれていた気がする。
凌が好きで迷いはない。
なのに後ろ髪をひかれた。
先輩の気持ちがちゃんと分かったから。
好意を持たれること、それはとても心地よかった。
先輩なら、今は僕が凌を好きでもずっと愛してくれるんじゃないだろうか?
楽なほうに逃げ出したい気持ちを、
「っ!」
手をひっぱられ、意識を凌に戻された。
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