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「……し、のぐ?」
何も言わないで黙々と僕を引っ張っていく。
沈黙が怖い。
何か……声をかけようとして、でも出来なかった。
握られてる手が、力強いを通り越して痛い。
乱暴に引っ張られていることが怖い。
凌は早く歩くから、小走りになりながら着いていく。
歯を食いしばっていないと泣いてしまいそうだ。
自分達の部屋に着くまでとうとう一言も話せなかった。
帰ってきてやっと手が離される。
振り返った凌はどう見てもイライラしていて、僕は反射的に俯くしかなかった。
「ご、めんなさ……」
巻き込んだし、僕の所為で先輩に蹴られた。
「僕、いつも迷惑ばかり、かけ…て、」
重荷になりたいわけじゃないのに。
「し、しかも、そ…れなのに……」
僕は男なのに。
「凌の事……好き、に……なって……」
気持ち悪いよね……
イヤだよね……
分かってたのに隠し通せもしないで。
「ごめ……」
「出て行った時も言ってたけどなんで謝るんだよ!?」
大きな声に、言い掛けた言葉が喉の奥で悲鳴になった。
情けないほど震えている。
凌の言葉一つ一つが怖い。
どう思われているか伝わってくるから。
怖い――けど、ちゃんと話すって決めたじゃないか。
どんな結果になっても、ちゃんと言葉にしなきゃ。
「凌に嫌われたくないから……謝るんだよ」
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