執着

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僕が凌の言っていることをちゃんと理解するのに時間は掛からなかった。 うっとりとしていた思考も、あんなところを触られてしまったら戻ってくる。 「え?……ふぁ、う?」 あれ? なんで?いつの間に? 凌に覆いかぶされてるの? それに、手が……触ってる。 「あの……っ」 イヤ……じゃない、から……拒めない。 だけど、うまく伝えられないけれど……戸惑っている。 今から、するの? いつかは、って…思ってたけれど、急で…… 好きだから求められたら嬉しい。 なのに、こんな土壇場の状況に頭が追い付かない。 深呼吸したい。 心臓が高鳴りすぎて痛い。 けど、待ってって言ったら、冷められちゃう。 そんなの絶対にイヤだ。 ……ちょっと怖いくらい我慢しなきゃ。 覚悟を決めて、ぎゅうぅぅぅって目をつぶった。 「叶斗?」 名前を呼ばれただけで、緊張で身体が跳ねる。 呼び掛けに返事をしたいのに、口を開けない。 「……震えてる」 静に言われた言葉に、ゆっくり目を開ける。 凌は……辛そうな顔をしていた。 慌てて震えを止めようとするのに身体が言うことを聞かない。 「ちが……」 凌にそんな顔をさせたいわけじゃない。 拒否してるつもりなんてないんだ。 「へいき、だから……」 やめないで、ガッカリしないで。
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