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そんなふうに強がりながらも、正面から凌を見ることが出来ない。
矛盾してる。
好きだし、触れたいし、嬉しいのに
怖いし、逃げたいし、苦しい。
どっちも嘘じゃない。
「あぁぁぁぁっ!!」
凌はイライラしたように唸ると、髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜながら僕から……離れた。
その事実に愕然とする。
だって、呆れられた――
「っ……ヤダッ!」
手を伸ばし、凌の服を掴む。
がっかりさせた?
いらつかせた?
なら、今すぐ覚悟決めるから。
「嫌いに、なっちゃ……ヤダ」
そんなの耐えられない。
服を掴む指先に、震える指では力も入らない。
けれど凌はその場に留まってくれている。
「僕、……初めてでどうしていいか分からなくて……嫌な思いさせてごめんなさい」
確かに震えてる。
すごく怖い。
でもその理由は凌を拒否してるわけじゃないんだ。
「……ん、なの」
凌は振り返らない。
けれど、服を掴む僕の指を暖かい手で包み込んだ。
「俺だって分かってる。……恐がってる奴に無理矢理なんてしたくねー」
凌?
もしかして離れたのは……僕の為?
「……けど、叶斗がスゲー可愛くてたまんねーし……」
くるりと振り向いた凌は……
「抱きたいって無性に思っちまうんだよっ!」
……駄々っ子みたいで可愛かった。
ポカンと呆気に取られてしまってから、おかしくなってきてクスクスと笑ってしまう。
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