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次の日の朝に野谷部会長が部屋を訪ねてきてくれた。
先輩のことで心配させてしまったので、まずは自分の安易な行動を謝罪したら、「無事ならいいんだ」と言ってもらえた。
それから――
向き合って座ったテーブルに差し出された封筒に、目を見開いて会長に説明を求めた。
だって、『退学届』なんて……
「そんなに不安がらなくてもいい」
「これ……」
先輩じゃないの?
だって先輩はもう受験で、センターだって一ヵ月きっている。
こんな時期に学校辞めるなんて、全部無駄になるんだよ?
それに高校卒業しなかったら進学できない……その後の人生だって……
精英に通ってるくらいだ、それなりに将来が期待されてるんでしょう?
ここまできて棒に振る気なの!?
「そんなの駄目です!!」
辞めたら取り戻すのどれだけ時間掛かるかも分からないじゃないか。
僕はそんなこと望んでない。
「――うん、分かってる」
会長は僕の目の前で封筒を手に取ると、躊躇なく破りはじめた。
「彼には蘇芳を罪悪感で縛る気かと言っておいたよ」
それからごみ箱に捨てると、会長は立ち上がりコートを羽織る。
「三年はとっくに自由登校だ。学校には卒業式まで来ない事、あと退寮を命じた。もう会うことはないだろう」
会えないと報告を受けて掠めたのは最後に見た先輩。
チリッと走った痛みに俯いた。
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