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通話が繋がるや否や、いっきに色んなことを捲し立てられた。
怒られているんだけど…頬が緩んでいくのを抑えられなかった。
「心配…してくれたんだね」
『っ!!…ほのぼのしてんじゃねー!』
顔は見えないけど、真っ赤になってる様子が想像できた。
すっごく不思議だ。
他の人から見たらたかが恋人ができただけなのかもしれない。
なのに、世界が変わった気がするんだ。
好きな人がいることで心が満たされて、気持ちに余裕ができたせいかもしれない。
今までネガティブに考えてきたようなことが、前向きに受け取れるんだ。
もう、嫌われるんじゃないかとびくびくはしない。
人からの好意を否定なんてしない。
「いつもありがとう、僕ね…ナツのことも大好きだよ」
返事はなくて絶句されちゃった。
クスクス笑いながら通話を切ると、コンコンと壁を小突く音が聞こえてそちらへ顔を向ける。
そこにいたのは凌だったが、ちょっと意地悪な笑みを浮かべていた。
「浮気はダメ」
ニッコリと言われてきょとんとしてしまう。
うわき?
…って浮気!?
「凌以外なんて…っ、するわけないです!!」
感情が高ぶって敬語になってしまった。
だって絶対誤解されたくないもん。
…って、あれ?
ショコラさんと付き合っていたときは、相手に干渉しなかった凌。
もしかしてこれは焼き餅なのかな?
僕は思った以上に凌に愛されているのかもしれない。
悟りかけた時に、手を握られる。
「浮気したら…手錠でつないじゃおっか?」
不気味なセリフなはずなのに、真っ赤になった僕はそれを望んでいるのかもしれない。
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