引っ込み思案

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スタートはみんな同じだったはずなんだ。 小学校入ったくらいからか、人には種類があると気が付く。 輪に入りに行くのに頭でシュミレーションするようになった。 明るい人気者に話し掛けるときに心臓が痛くなるような苦手意識を持った。 気が付けば、僕、蘇芳叶斗はすっかり口下手で暗いいつも俯いている人間になっていた。 町で同級生に会っても声もかけてもらえない。 相手は僕のこと同級生だと知らないのかもしれない。 それくらい目立たないのが僕。 ………いいんだ。 地味で存在感が無くても。 人に目を付けられたりするより全然いい。 友達を無くさないために、毎日必死でストレスを抱えるより一人でいい。 強がりも含みながら、そういう考えになるのに時間はかからなかった。 それは精英学園という高校に入ってからも変わらなかった。 精英学園は全寮制なので、学校生活に加え私生活でも他人と暮らさなきゃいけなかった。 同室相手は人数の関係で3年生。 相手も1年の俺には興味ないらしく、ルームメイトって肩書きだけで交流したことはほぼ無い。 この学園にきて人と会話なんて…リアルに数えられるほどしかしていない。 『別に馴れ合うために進学したんじゃないし』と卑屈に自分を正当化して、変わろうなんて思いもしなかった。 でも、フラストレーションは知らないところで積もっていくんだ。
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