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「あいつ名前なんだっけ?」
「さぁ?」
「陰気だよな」
そんな陰口を偶然聞いてしまったり、皆は遊びに行っても僕には声も掛からなかったり。
気が付かなければ平気なのに、知りたくないことはなぜか敏感に察知してしまう。
自分はこれでいいと思いながら、奥歯を噛み締めた。
僕は情けない。
こんなはずじゃなかったのに………。
僕だって………。
そんな感情が降り積もって、疲れてしまった。
いつまでこんなにイジイジしてなきゃいけないんだろう?
そんな僕が逃げ込んだのがアニメの世界だった。
アニメの中には僕みたいなのに人気者がいたり、あとオタクには人付き合いが苦手な人が少なくなかった。
ネットで知り合った同類たちはみな人見知りで、お互いがいい距離を計れて心地よかった。
そして次第にイベントへ足を運ぶようになった。
そこで僕はコスプレを知る。
キャラになりきっている姿が羨ましくって、僕も始めた。
コスプレしている時は、叶斗という暗い自分じゃなくて、大好きなキャラなんだ。
自分じゃない、ヒーロー。
コスプレしてイベントに参加しているうちに、女の子に声をかけられるようになった。
ナンパとかじゃないよ?
なんか好きなキャラのイメージ通りなんだって。
「受っぽさが出てる~」とか言われていたけど、誉められればやっぱり嬉しい。
仲良くなった彼女達はだんだん僕に要求するようになっていった。
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