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笹塚くんと帰るのは緊張した。
いざ2人になると何を話していいか分からなくて、話題を必死に頭の中から探してばっかりいた。
それでもろくに話せなくて…つまらない思いをさせたんじゃないだろうか?
僕を心配して付き合ってくれているのに、嫌じゃなかったかな?
「ごめんね…」
寮に着いたと同時にそんな言葉が零れてしまった。
「僕…話題とか、ないし…ノリも…あの」
しどろもどろになりながら、なんとか自分の気持ちを伝えようと言葉を紡ぐ。
アガってしまっている僕は、言いたい事があるのにうまく言葉にならない。
「無理、させて…ごめ…」
「あぁ…バカだなぁ」
必死な僕に笹塚くんは合点がいったようで苦笑している。
「蘇芳が口下手なのは最初から知ってる。だから、沈黙も気にならないし無理に話さなくていいんだ」
「え…」
優しい言葉に、キョトンとしているとまた頭を撫でられた。
「なんか一生懸命話そうとしてると思ったら…、俺がつまんなくないか気にしてくれたんだ?」
「だって…僕、笹塚くんに悪くて…、楽しいほうが、いいって」
「俺、愛されてるね?」
「ふぇ!?」
あ、あああ愛って…
だ、大事にはしてるよ!勿論!!
真っ赤になりながら困っていると、笹塚くんはクスクスと笑っている。
「蘇芳のそういう誠実なとことか、頑張り屋さんなとこ俺たちはちゃんと見てるから。だから、何かしてあげたいんだ」
そんな…
僕は何も出来ないから、ただ頑張るしかないだけなのに。
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