1298人が本棚に入れています
本棚に追加
「いるみたいだけど…用事があるなら、上がっていって?」
ドアを開けて先に入ってもらうよう促すと、笹塚くんは少し思案した後、玄関をくぐった。
「お邪魔しまーす」
笹塚くんに続いて、僕もリビングに向かい廊下を歩く。
「凌いるー?」
この間仲良くなったばかりとは思えないフランクさで呼ぶと、喜多川くんが部屋から出てきた。
「なんだ、ナツか?叶斗が呼び捨てにしたのかと嬉々として出てきちゃったじゃん」
「へ?」
「ばーか、蘇芳と俺より仲良くなろうなんて甘い」
「ふぇぇ!?」
2人を交互に見て、焦っていると、2人とも満足そうにニヤニヤしている。
あ…僕の反応で楽しんでるんだ?!
むっつりと頬を膨らます。
「怒らないでよ。俺たち蘇芳との距離を縮めたいのは事実なんだから」
笹塚くんが二の腕の辺りをポンと叩いて言った台詞に、くすぐったい気持ちになる。
僕、こんなふうに人から親しくなろうとされたことがないから、嬉しいんだけどどう反応していいか戸惑ってしまう。
挙動不振なほどソワソワしてると、喜多川くんが僕の正面に来て目線を合わせた。
「とにかく『凌』って呼んでみ?」
「え?ええ?」
「そうそう、俺は『お兄ちゃん』ね?」
「あ、それズルい」
「えぇぇ!?」
2人に詰め寄られてだんだん壁ぎわに追いやられてしまった。
うわーん、もう逃げ場がないよぅ。
最初のコメントを投稿しよう!