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「話が見えないんだけど?」
ナツと小声でやり取りしていたら、困惑したように声がかけられた。
そうだよね、話があるとか言っておきながら放置されたら困るよね。
でも、話したら…僕と同室になったの面倒臭いって思われないかな?
嫌がられないかな?
凌と僕に接点なんてなくて、こういう機会がなきゃ知り合えなかった。
少し距離が縮まったのに…
嫌われたくない───。
無意識に近くにいたナツの服の裾を、縋るように握ってしまっていた。
「実はね、叶斗の前のルームメイト、叶斗に付きまとってたんだ」
何も言わない僕に代わり、ナツが説明する。
言われてしまった事に、凌の反応を見るのが怖くて目をつぶった。
「付きまとうって?」
「ストーカーってこと。この先輩なんだけど…」
紙の揺れる音がする。
その間も顔を上げれずにいた。
「もし見たら気を付けてくれる?」
「ふ~ん…」
「あ、あの…ぼ、僕が悪いから…迷惑かけて…あの」
ダメだ、申し訳なく思ってるのに、どう謝っていいか分かんない。
裾だけじゃなくナツの腕にしがみついて、肩の所に顔を埋めてしまった。
「凌にまで迷惑かけて…ごめんなさい」
「…なんか、ムカつく」
静かに響いた言葉が鋭く胸を抉った。
…覚悟はしてたけど、そこまで拒絶されると…泣きそう。
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