1298人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて両手で顔を隠す。
気を抜いてうっかりしていた。
こんな顔、人にあまり見せたくないのに…。
「見られるのイヤ?」
聞かれたので素直に頷くと、ナツは眼鏡を僕に掛けて戻してくれた。
「俺は、叶斗を可愛いと思ったよ?隠すなんて勿体ない」
そんな事ない。
隠しておかないと、問題が起きる。
いつだって原因はこの顔だった。
しんみりして黙っていると、ティッシュを持った指で鼻を摘まれた。
「はい、ちーん」
「ふがっ!」
「あはは、変な声」
だ、だって急に…うう、恥ずかしい。
鼻水出ちゃったよ。
ずずっと啜ると、また鼻をぎゅっと摘まれた。
「ナツが…いきなり、だったから」
口を尖らせると、よけいににやにやされた。
「手が掛かる子だなぁ~」
なんでそんなに楽しそうなんだよ。
涙やら鼻水やらを拭われた頃、コンコンと部屋がノックされた。
「電話終わったみたいだね」
「………うん」
また少しだけ胸は痛んだけど、涙は止まっていた。
ナツが居て…良かった。
「じゃ、俺は帰るけど大丈夫?」
「うん、ありがとう…また明日ね」
部屋のドアを開けて、ナツは目の前にいた凌にも挨拶すると帰っていった。
残された僕は、深呼吸してから凌に声をかけた。
「明日、遅いんだ?」
たわいもない話をするように自然に聞こえるように、話した。
最初のコメントを投稿しよう!