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「あー…いや、明日は撮影終わったらすぐ帰るよ」
「え?だって、彼女…」
会いたいって言われたんじゃないの?
凌はバツが悪そうに視線を彷徨わせた。
…もしかして、僕がストーカーされてるって知って心配させた?
「僕はしばらくナツが送ってくれるし…こ、怖かったらそのまま居てもらうから」
邪魔したくないよ。
僕はそこまでしてもらいたいわけじゃないんだ。
「だから…ナツばっかに甘えんなって、悔しいだろ?」
「でも…」
彼女が拗ねちゃうんじゃないの?
………会えなくてすれ違って…別れちゃえばいいのに───。
思い浮かんだ最低な発想を、頭を振って振り払う。
「どっちにしろ明日はもう断ったし、観念しろって」
「…ありがと」
かすかな優越感。
彼女より優先してもらえた。
そんな事で喜ぶ自分が卑しいっつ思うのに、嬉しい。
「…てか、泣いた?」
じっと見つめられ顔を伏せる。
眼鏡で隠れてるって思ったのに、鼻声だったかな?
「やっぱり…まだなんか不安でもあんのか?」
「ちょ…」
抵抗虚しく眼鏡を取られてしまう。
「ナツだけじゃなく俺にも相談しろよ?」
「…張り合ってる?」
さっきから思ってたけど、ナツと凌、競い合ってない?
凌は正直に頷いて肯定した。
「滅多に人に懐かない動物が、自分だけに懐いたらたまんないよな」
「僕はペットじゃないってば!」
「うん、ペットより可愛いよな」
僕の扱い、変な方向に向かってない?
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