プロローグ

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クリスタルタウンから北へ北へ、幾つもの山脈を越えたところにその国はある。 シィラ共和国。 冬が長く夏は短い。苛酷な北国に人が住めるのは、国を網目状に流れる不思議な力――魔力があるからであった。魔力の溜まり場所は比較的暖かく、人はここに町を作った。 長らく続いた王政は百年ほど前にクーデターで倒れ、現在は比較的安定した共和政が国を保たせている。 クリスタルタウン側からシィラへ入ると、ある処で東西に道が分かれる。国の中央から湧く水源が、東西に恵みをもたらす。 西へ行けば首都。東へ行けば点在する町や村。 東側の外れにアマルハマルという名の小さな町がある。その町に寄り添う森に隠れるようにして、一軒の大きな屋敷があった。 人は言う。 『あの屋敷には悪魔が住んでいる』と。
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