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「おい」
屋敷内。広い部屋に二人分の姿があった。一人の男がもう一人の男に声を掛ける。
「はーい?」
声を掛けられた男は外から入ってきたばかりのようで、髪を固めている雪を拭いながら返事をする。
「魔力の流れがおかしい。魔界を見てこい」
「わぁ、パシリだね?行くよ行きますよ行けばいいんでしょ当主様」
軽い口調で形ばかりの不平を言った男は、部屋を出て地下へ向かった。
トントンと石造りの階段を降りる。
「帰ってきたばっかなのにさーぁ、人使い荒いよ。…悪魔使いかな?まぁあの人に情があったら怖いけど」
ウフフと笑いながら重いドアを開ける男。扉と石畳が擦れてゴゥ…という音をたてる。
「魔界ねぇ。あ、あの子放置してた。生きてるかなぁ」
男は壁へ向かって歩む。石壁が迫ってもなお男は歩調を緩めない。
男は壁を通過した。
景色がガラリと変わる。障気を含んだ生暖かい空気が男を包む。
開けた視界を見た男の表情が固まった。
「ぅわぁ」
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