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「イチマツ!」
「ん?ああ、DOKI。」
それはある日の放課後の事。
「イチマツにチョコレート持ってきたぞ。」
夕日が差し込む廊下にて、
片手に提げている紙袋からイチマツに渡すチョコレートを探しているDOKI。
「おお!今年は手作りなのか?」
「ああ。幼少からの付き合いだが、私の手料理は始めてだろう。口に合うか解らないが…」
ようやく見つけた、ウサギのプリントがされた袋をイチマツに差し出した。
いつもは市販のチョコレートを貰っていたので、DOKIの手作りというのは新鮮だった。
「サンキュ!気持ちだけでもありがたい……ぜ…………」
「どうした?」
「い、いや。なんでもねえ。(なんだ…これ!!)」
可愛いウサギのプリントの裏には、何か不気味な固形物が入っていた。
DOKIは早く食べろという視線を送って来る。
「…食べないのか?」
「あああのよ、これ…何混ぜたの?」
イチマツは本能的に危機を感じていた。
これは体内に取り込んではいけない、と。
「板チョコと生クリームとか。一応生チョコレート作ったんだが…レシピ見ながらな。」
にっと自信ありげに微笑むDOKI。
だが、今日のは何か違った。
この固形物を目の前にこの笑顔…悪魔にしか見えなかった。
「(レシピ通り作ってこんなグロテスクな固形物が出来る訳ねえよ!え、何?DOKIって天才?)」
「今食べないのか??」
今食べろと目が催促しているのが嫌でもわかった。
「お、おお!食べるさ!食べるとも!」
DOKIの何か黒い部分が海間見えたきがした。
もはやイチマツ崩壊気味。
そして、意を決して口に含んだ。
「……………」
「どうだ?」
「グァアアァアア………………あれ?……美味い…」
口に入れた瞬間溶けるチョコの甘さは、イチマツ好みの甘さだった。
見た目とのギャップに驚きつつ、うまい、と二つ目を食べた。
「それはよかった。さて、毒味も済んだ事だ。配ってこよう。」
「毒味?!」
毒味という言葉に衝撃を受けたイチマツ。
おもわず目が点になってしまった。
「はは、冗談だ。」
「なんだよ、確信犯か?」
「日ごろの感謝を込めて作ったらこんな見た目になってしまってな。イチマツなら食べてくれると思った」
「どんな感謝だよ」
それだけでこんな形になるものかとため息が出た。
「とにかく…イチマツ、いつも有難う。これからもよろしくな。」
「ああ。こちらこそ。」
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