バレンタインの男ども(会話)

2/2
前へ
/10ページ
次へ
「イチマツ!」 「ん?ああ、DOKI。」 それはある日の放課後の事。 「イチマツにチョコレート持ってきたぞ。」 夕日が差し込む廊下にて、 片手に提げている紙袋からイチマツに渡すチョコレートを探しているDOKI。 「おお!今年は手作りなのか?」 「ああ。幼少からの付き合いだが、私の手料理は始めてだろう。口に合うか解らないが…」 ようやく見つけた、ウサギのプリントがされた袋をイチマツに差し出した。 いつもは市販のチョコレートを貰っていたので、DOKIの手作りというのは新鮮だった。 「サンキュ!気持ちだけでもありがたい……ぜ…………」 「どうした?」 「い、いや。なんでもねえ。(なんだ…これ!!)」 可愛いウサギのプリントの裏には、何か不気味な固形物が入っていた。 DOKIは早く食べろという視線を送って来る。 「…食べないのか?」 「あああのよ、これ…何混ぜたの?」 イチマツは本能的に危機を感じていた。 これは体内に取り込んではいけない、と。 「板チョコと生クリームとか。一応生チョコレート作ったんだが…レシピ見ながらな。」 にっと自信ありげに微笑むDOKI。 だが、今日のは何か違った。 この固形物を目の前にこの笑顔…悪魔にしか見えなかった。 「(レシピ通り作ってこんなグロテスクな固形物が出来る訳ねえよ!え、何?DOKIって天才?)」 「今食べないのか??」 今食べろと目が催促しているのが嫌でもわかった。 「お、おお!食べるさ!食べるとも!」 DOKIの何か黒い部分が海間見えたきがした。 もはやイチマツ崩壊気味。 そして、意を決して口に含んだ。 「……………」 「どうだ?」 「グァアアァアア………………あれ?……美味い…」 口に入れた瞬間溶けるチョコの甘さは、イチマツ好みの甘さだった。 見た目とのギャップに驚きつつ、うまい、と二つ目を食べた。 「それはよかった。さて、毒味も済んだ事だ。配ってこよう。」 「毒味?!」 毒味という言葉に衝撃を受けたイチマツ。 おもわず目が点になってしまった。 「はは、冗談だ。」 「なんだよ、確信犯か?」 「日ごろの感謝を込めて作ったらこんな見た目になってしまってな。イチマツなら食べてくれると思った」 「どんな感謝だよ」 それだけでこんな形になるものかとため息が出た。 「とにかく…イチマツ、いつも有難う。これからもよろしくな。」 「ああ。こちらこそ。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加