その探偵、如何様也

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「初めまして、私立探偵の虚木透理(ウツロギ トウリ)と申します」 目の前の男、虚木透理さんは無表情で名乗った。 「はぁ…」 それに私は、(多分)引きつった笑顔で曖昧に答える。 ………どうして、こうなっているのだろう。 全ては、ウエイトレスのアルバイトをクビになったのが始まりだ。 私―――藤堂菖蒲(トウドウ アヤメ)は、ファミリーレストランのアルバイトをしている最中、あまりに態度の悪い客を思わず殴ってしまったのだ。それも、辺りからどよめきが漏れるような見事なコークスクリューで。 晴れて職なしのプーになった私は、直ぐに求人誌とハローワークで仕事を探し、数件の面接を受けたが、そこは昨今の不況の影響で全滅。 途方に暮れていた私に、ある張り紙が目に飛び込んできたのだ。 『助手募集。福利厚生あり。 給与:要相談 条件:二十代で体力にそこそこ自信があり事務仕事の出来る方。 電話番号:0180………』 私は、藁にもすがる思いでその電話番号をプッシュした。 その結果がこれだよ! 「えー、履歴書を拝見させていただいたのですが、体力に自信があると」 虚木さんは、無表情なまま、平坦な声で私に質問をした。 「ええ、まあ…」 高校生活、全部陸上に費やした日々は伊達じゃないぜ!彼氏とかはまったく出来なかったけど……。 「やっぱり資格とかないとダメですか……」 恐る恐る聞くと、虚木さんは私の履歴書に目を通しながら、適当な感じで答えた。 「いえ、あなたで決まりです。おめでとうございます」 「やっぱりダメですよねってハァ?」 いや、ちょっと?まったく訳がわからないよ。 「私で決まりって……どういうことですか!?」 「落ち着いてください藤堂さん。ちゃんと理由はありますから」 虚木さんは面倒くさそうに私をたしなめて、指を一本立てた。 「一つは、フィールドワークが多い為、体力に自信がある方が好ましいということです。はっきり申し上げて、事務仕事ができるかどうかは二の次ですね」 じゃあなんで募集条件の一つに入れたんだ。
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