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10分…、20分…、30分…。
いい加減着替えが長い。
俺は着替えているだろう洗面所へと向かった。が、そこはもぬけの殻だ。
ふと、耳をすませるとリビングから音が聞こえる。
「何やってんの?」
「ニュース見てるよ」
あろうことかテレビを見てやがった。しかも着替えずにバスタオル一枚のまま。
目のやり場に困る。待て俺。
「好き勝手にやるのがあたしの信条なんだよ」
「ぬらりひょんだからか?」
「まぁね」
「出てけ」
そうこう押し問答していると、ぬらりひょん(仮)は突然立ち上がった。
「あたし、もう行くね」
そういうと、勢いよくバスタオルを剥ぎ取った。
普通はそれで真っ裸の状態になるはずだが、目の前のぬらりひょん(仮)の姿は黒い着物を着ている状態になっていた。
ちょっと惜しい。だから待て俺。
「じゃ、またね」
「二度と来るな、ってそっちは壁――」
そいつは壁もなんのその、通り抜けて外に出ていった。
調べてみても普通の壁で、どこにも穴や仕掛けはない。
「忘れよう」
俺は今起こった事を忘れるべく頭を横に振った。
だがその時、壁からさっきのぬらりひょん(仮)が出てきた。びっくりした。
「これお土産。しばらく通うからよろしくね」
「……ども」
また伯方○塩。
俺は諦めが肝心の精神で全てを受け入れた。
そして思った事は一つ。
今度から壁際に盛り塩をしておこう。もちろん、伯方○塩で。
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