第三章・ぬらりひょん

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10分…、20分…、30分…。 いい加減着替えが長い。 俺は着替えているだろう洗面所へと向かった。が、そこはもぬけの殻だ。 ふと、耳をすませるとリビングから音が聞こえる。 「何やってんの?」 「ニュース見てるよ」 あろうことかテレビを見てやがった。しかも着替えずにバスタオル一枚のまま。 目のやり場に困る。待て俺。 「好き勝手にやるのがあたしの信条なんだよ」 「ぬらりひょんだからか?」 「まぁね」 「出てけ」 そうこう押し問答していると、ぬらりひょん(仮)は突然立ち上がった。 「あたし、もう行くね」 そういうと、勢いよくバスタオルを剥ぎ取った。 普通はそれで真っ裸の状態になるはずだが、目の前のぬらりひょん(仮)の姿は黒い着物を着ている状態になっていた。 ちょっと惜しい。だから待て俺。 「じゃ、またね」 「二度と来るな、ってそっちは壁――」 そいつは壁もなんのその、通り抜けて外に出ていった。 調べてみても普通の壁で、どこにも穴や仕掛けはない。 「忘れよう」 俺は今起こった事を忘れるべく頭を横に振った。 だがその時、壁からさっきのぬらりひょん(仮)が出てきた。びっくりした。 「これお土産。しばらく通うからよろしくね」 「……ども」 また伯方○塩。 俺は諦めが肝心の精神で全てを受け入れた。 そして思った事は一つ。 今度から壁際に盛り塩をしておこう。もちろん、伯方○塩で。  
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