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この前、旧校舎のトイレの話しをしたよな。
そこにいるのは花子ちゃんだけじゃないみたいだったんだ。
ある日、いつも通りに奥から二番目の個室に入ってタバコに火を着けた時、俺の左隣(花子ちゃんは右隣、それは左隣)から声が聞こえてきた。
「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」
と。
正直、俺は大をしてるわけじゃないから紙なんていらないんだよな。
色付きでもいらないし。
「そんな紙いら――」
「ダメ!そう言っちゃダメだよ!」
俺が断ろうとした時、花子ちゃんが遮るように言葉を被せてきた。
どうしてだ?普通に断ろうとしただけじゃないか。
「なんで言っちゃダメなんだ?」
「君の髪がなくなるからだよ」
俺の紙?ああ、トイレットペーパーか。
別に使わないんだけどな。
「とにかく、そいつには気をつけて。君も言葉には気をつけてね」
「なら、何を言えばいいんだよ」
「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」
ほら、左隣も急かしてきたじゃねぇか。
でも、赤か青しかないのか?普通は白だろ。
他の色があるか気になる。
「そいつ、結構調子に乗ってるから困らしたらいいよ」
「いいのか?」
「うん」
そうだな…。
なら、困らしてみるか。
「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」
「じゃ、虹色の紙で」
「ふぇっ!?に、虹色?」
随分可愛らしい声で驚いたみたいだ。
「レインボーカラーは無いのか?」
「あ、あの、ちょっと予想外で…というか、花子、私どうしたらいいのかな?」
「あはは。虹色かぁ。君、なかなか困らせ方上手いね」
「花子!どうしたらいいの!」
「諦めて大人しくしときなよ」
「あぅ…、うん」
どうやら、俺の困らせ方はよかったらしい。
それにしても、なんで『いらない』はダメだったのか。
タバコをふかしながら、首を傾げる俺であった。
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