第五章・赤い紙、青い紙

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この前、旧校舎のトイレの話しをしたよな。 そこにいるのは花子ちゃんだけじゃないみたいだったんだ。 ある日、いつも通りに奥から二番目の個室に入ってタバコに火を着けた時、俺の左隣(花子ちゃんは右隣、それは左隣)から声が聞こえてきた。 「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」 と。 正直、俺は大をしてるわけじゃないから紙なんていらないんだよな。 色付きでもいらないし。 「そんな紙いら――」 「ダメ!そう言っちゃダメだよ!」 俺が断ろうとした時、花子ちゃんが遮るように言葉を被せてきた。 どうしてだ?普通に断ろうとしただけじゃないか。 「なんで言っちゃダメなんだ?」 「君の髪がなくなるからだよ」 俺の紙?ああ、トイレットペーパーか。 別に使わないんだけどな。 「とにかく、そいつには気をつけて。君も言葉には気をつけてね」 「なら、何を言えばいいんだよ」 「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」 ほら、左隣も急かしてきたじゃねぇか。 でも、赤か青しかないのか?普通は白だろ。 他の色があるか気になる。 「そいつ、結構調子に乗ってるから困らしたらいいよ」 「いいのか?」 「うん」 そうだな…。 なら、困らしてみるか。 「赤い紙…青い紙…どっちが欲しい?」 「じゃ、虹色の紙で」 「ふぇっ!?に、虹色?」 随分可愛らしい声で驚いたみたいだ。 「レインボーカラーは無いのか?」 「あ、あの、ちょっと予想外で…というか、花子、私どうしたらいいのかな?」 「あはは。虹色かぁ。君、なかなか困らせ方上手いね」 「花子!どうしたらいいの!」 「諦めて大人しくしときなよ」 「あぅ…、うん」 どうやら、俺の困らせ方はよかったらしい。 それにしても、なんで『いらない』はダメだったのか。 タバコをふかしながら、首を傾げる俺であった。  
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