第六章・濡れ女

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刻々と空が赤く染まっていく夕暮れの時間。 旧校舎で花子ちゃんと、赤い紙か青い紙どっちがいいかを聞いてくる子とちょっと話しをした帰り道。 そういや今日、『虹色の紙ってどこで売ってるかなぁ?』って聞いきたな。 無いと思うが。 今は帰路の途中にある橋を渡っている。 「ここから見る川は綺麗だな」 橋の下は川が流れている。 夕暮れに染まった朱色の川は、幻想的で何故か切なく思える。 「切ないのはなんでかな…」 「そうですね…」 誰もいないだろうと思ったのに、ふと隣を見ると女性が居た。 雰囲気的に大人の女性って感じだ。 だけど、髪から足元までずぶ濡れだ。 服も濡れていて、ぴっちりと張り付いている。エロい。 …最近、俺は正直になってきたと思う。 「私、思うんですよ…。何故こんなにも美しい世界には、悲しみが溢れているのか…」 「とりあえず、アンタに何があったんだ、と聞いていいか?」 今日は、全国的に晴れで快晴だった。雨なんかどこも降っていなかったのに、全身ずぶ濡れの状態とは何があったんだろうか。 それに、突然そんな事を言われても、俺は何を答えたらいいかわからない。 「悲しみがあるから、私は泣く代わりに濡れる。悲しみが続く限り、永遠に濡れ続ける呪縛。だから、私は【濡れ女】と呼ばれるようになりました…」 「ドライヤーで乾かしていい?」 「邪道です…」 邪道なんだ。 この人が言ったのが要領を得なかったから、濡れてるならドライヤーしたら乾くよな、と思ったのに。 というか、何があったのか、って説明しないのか? 「貴方は悲しみはどうしたら無くなると思いますか…?」 「…難しいな。自分が楽しいと思う事でもするとか?」 「違います…。それは一時(いっとき)だけしか意味がないですから…」 「じゃあ、なんだよ?」 ずぶ濡れの女性は俯(うつむ)き、暗い声を一層暗くさせて、ボソッと一言――     「死ぬ事です…」  
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