第八章・トイレの○○さん2

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「嫌がってるなら、そんなことさせたくない」 これが本心だ。 そりゃ見たいけど、本当に嫌がってるのに見るわけにはいかないだろうよ。 「…でも」 「まあ、俺がいろいろ言い過ぎたよ。見たいけど、嫌ならいいさ」 「…うん。ごめんね?」 「なんで謝る。俺が謝る方だろ」 「…やっぱり君は優しいね」 「そうか?」 「うん」 優しい、かな。そんな優しくはないと思うが。 「で、いつまでここに居るんだ?」 「んー。まだ居るよ。気に入っちゃったし」 「そうか。旧校舎の方はどうするんだ?」 「あっちもお気に入りだからね。ここと行ったりきたりするかも」 「トイレ経由でか?」 「トイレ経由でね」 花子ちゃんが俺ん家のトイレにいるのは落ち着かないが、気に入ってもらえたならいいか。 「具体的に明日になったら旧校舎のいつもの場所に戻るから、それまでここに居させてね」 「前々から思ってる、というか、言ったと思うけどさ…、お前が居るトイレって男子トイレだぞ?」 「知ってるけど?」 「お前、女の子なら女子の方行けよ」 「使われてないならどっちも一緒だよ。それに、男子トイレにしか君はいないからね」 「変態じゃないんだから当たり前だろ」 「私を覗こうしたくせに」 「ごめん。忘れてください」 ある日、自分の家のトイレに入ろうと思ったらコイツが居た。 放課後、旧校舎のトイレだけの関係だと思ってたけど、ここでも話し相手の関係になるとは思わなかった。 でも、こういう日もたまにはいいかな、と俺は思う。 あと、一つ解ったことがある。 俺はこれからコンビニへトイレを借りに行くしかないと。ダッシュで。 限界だ。  
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