第一章・猫又

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ある日、丑三つ時の頃、俺は自分のベッドで寝ていた。 すると突然、ドスンと俺の腹になかなかの衝撃で何かが乗っかってきた。 「んっ!?なんだ?」 重い瞼を開けて、その物体を見てみる。 そこには、ネコミミとしっぽ二本を着けた少年がいた。 「ご主人。ただいま」 「んあ?誰、お前?」 正直に言うと、こんな少年の知り合いはいない。 しかも"ご主人"だと? そんな性癖もない。 「ご主人。また一緒に寝ていい?」 「待て。俺にそんな性癖はない!」 「…ダメかニャ?」 そんな性癖はないはずなのに、萌えてしまった俺が憎い。 「とりあえず落ち着け俺。お前は誰だ?」 「ニャ?僕だよ。この家のクロだニャ」 「家のクロは猫のはずだ」 「あ、僕猫又なの」 猫又。永く生きた猫のしっぽが二つに別れて妖怪になったモノ。 猫又、または化け猫と呼ばれ、人を騙したりする。 「それがクロ…お前か?」 「そうだけど、騙したりはしないニャ。悪い人間や良い人間もいる。それと同じ」 「解りやすい例をありがとう。じゃなくて!」 「うー…ご主人。僕寝る…」 と言って、俺の布団の中へ入ってきた。 「あ、こら!まだ話しは済んでな」 「……ニャ…」 「…もう寝やがった」 布団に入ってすぐ寝る所はクロそのものだ。 ひっついてきた温もりもクロの暖かさだ。 「…お前本当にクロなんだな」 「……ニャ。ご主人…好きだニャ……」 なんていうか、もうどうでもいいや。 これはクロ。それでいいじゃないか。 猫又でも家の可愛い黒猫だ。 「まぁ寝るか…」 布団を被り直し、クロを撫でながら眠りについた。 こんな奇妙なモノ達との出会いの一ページだが、布団とクロの暖かさで俺は深い眠りに落ちていったのである。 ちょっと待て。確かクロってメスだったはずだけど…。 まぁいい。おやすみ。  
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