第二章・トイレの○○さん

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俺は今、学校に居る。 時間は夕方4時ぐらい。 場所は、使われなくなった旧校舎の3階のトイレ。 その一番奥より二番目の個室の中で座っている。洋式だ。 俺的には一番奥がよかったんだけど、いつも奴が先に入ってるから座れない。 まぁ俺はタバコを吸うのが目的だから、どこでもいいんだけどな。 それで何故、旧校舎の3階のトイレという不便な場所に居るのかは、 「君、またタバコ?体に悪いから辞めなよ」 「俺の勝手だ」 一番奥の個室、つまり隣のこいつが話し相手になってくれるからだ。 ちなみに姿は見たことはないが、声からして女の子だろう。 …使われなくなったとはいえ、ここは"男子"トイレなんだけどな。 「まったく、君はいつも勝手すぎるよ。心配してるのに」 「俺はお前がここに居るのが心配だ」 誰も立ち寄らないトイレに、死者の魂が見える個室と、開かずの個室で女の子の笑い声が聞こえる、というのを友人から噂話として聞いた事がある。 それは俺のタバコと隣のこいつの笑い声だ。 まったく、噂にされるとはいい迷惑だな。俺もこいつも。 「そろそろ、俺帰るわ」 「あ、うん…」 「また明日も来るからさ」 「う、うん!…でもタバコは辞めなよ?」 「嫌だね。あ、そうそう。お前、名前何て言うの?」 結構ここに来てるけど、隣のこいつの姿も名前も知らない。 姿を見せるのは嫌らしいのは前に聞いた。 だったら名前だけ聞いとけば探せるだろう、と思ったからだ。 「あ、言ってなかったね」 「まぁな。で、名前は?」 俺は、手を洗いトイレの出口に向かって歩き出した。 その時、あいつは自分の名前を言った。 「私は花子だよ。またね」 「ああ。またな花子ちゃん」 花子、か。思い至る子が居ない。 俺はそのまま家に帰って行った。 それにしても、あいつは何故男子トイレに入ってるんだろうか? それだけがいつまでも疑問に残っている俺であった。  
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