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俺は今、学校に居る。
時間は夕方4時ぐらい。
場所は、使われなくなった旧校舎の3階のトイレ。
その一番奥より二番目の個室の中で座っている。洋式だ。
俺的には一番奥がよかったんだけど、いつも奴が先に入ってるから座れない。
まぁ俺はタバコを吸うのが目的だから、どこでもいいんだけどな。
それで何故、旧校舎の3階のトイレという不便な場所に居るのかは、
「君、またタバコ?体に悪いから辞めなよ」
「俺の勝手だ」
一番奥の個室、つまり隣のこいつが話し相手になってくれるからだ。
ちなみに姿は見たことはないが、声からして女の子だろう。
…使われなくなったとはいえ、ここは"男子"トイレなんだけどな。
「まったく、君はいつも勝手すぎるよ。心配してるのに」
「俺はお前がここに居るのが心配だ」
誰も立ち寄らないトイレに、死者の魂が見える個室と、開かずの個室で女の子の笑い声が聞こえる、というのを友人から噂話として聞いた事がある。
それは俺のタバコと隣のこいつの笑い声だ。
まったく、噂にされるとはいい迷惑だな。俺もこいつも。
「そろそろ、俺帰るわ」
「あ、うん…」
「また明日も来るからさ」
「う、うん!…でもタバコは辞めなよ?」
「嫌だね。あ、そうそう。お前、名前何て言うの?」
結構ここに来てるけど、隣のこいつの姿も名前も知らない。
姿を見せるのは嫌らしいのは前に聞いた。
だったら名前だけ聞いとけば探せるだろう、と思ったからだ。
「あ、言ってなかったね」
「まぁな。で、名前は?」
俺は、手を洗いトイレの出口に向かって歩き出した。
その時、あいつは自分の名前を言った。
「私は花子だよ。またね」
「ああ。またな花子ちゃん」
花子、か。思い至る子が居ない。
俺はそのまま家に帰って行った。
それにしても、あいつは何故男子トイレに入ってるんだろうか?
それだけがいつまでも疑問に残っている俺であった。
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