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「あっ……」
その時、目の前に大きな犬が立っていた。
「竜……」
子供の頃に見た時と同じ顔。
真っ黒の大きな犬。
「仲良くしてくれる?」
今は誰でもいいから話がしたかった。
そう、人間じゃなくてもいいから……
そっと檻に手を入れて、頭を撫でようとしたら後ろから声がした。
「いけません!」
「え?」
霧島さん……
「大丈夫だよ」
「怪我をしたらどうするのですか?」
「……怪我なんてしないよ」
「いけません」
そっか……
俺が怪我をしたら怒られるのは彼なんだ。
「ごめん……なさい」
「いえ、この犬は昔奥様に噛み付いてここに」
「噛み付いた?」
「はい」
よく殺されなかったな……
もしかしておばあさまはいい人なのかな?
「奥様は激怒してこの犬の舌を切り取り、この檻に閉じ込め、餌も3日に一度しか与えられていません」
「え?」
何それ……
そんなの拷問じゃん。
ひどいよ……
可哀相だよ……
「どうして噛み付いたの?」
「この犬には昔、仲のいい犬がいたのですが」
急に口ごもった霧島さんを見つめた
「うん………何?」
「私もその時はまだ子供でしたのであいまいな事は」
「子供?霧島さんが?」
「はい、父親と昔からこの屋敷で暮らしています」
「父親って、あばあさまの?」
「はい、私は息子です」
そうだったんだ……
確かに、若い人だとは思っていたけど、漸く一つ謎が解けたような気がした
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