ー一日目ー

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無言のまま、ぼんやり気持ち悪い木々を見つめていた。 どこを見ても緑しかない。 ビルも、コンビにも、街の明かりも……どこにもない。 親は大嫌いだったけど、賑やかな街は大好きだった。 夜中でも、温かく俺を包んでくれる街が好きだった。 親なんて、夜中に俺が部屋に居ない事すら気付いていないだろう。 それほど子供には無関心で、自分達の事しか考えてなくて……。 だけど、俺は諦めていたから別に親が無関心でもどうでもよかった。 毎日、付き合ってくれる友達がいたから。 みんな家庭環境が複雑な奴ばかりで、それが当たり前だと思える時代なのかも……とやはりみんな親の愛情を求めることすら諦めていた。 そんな変な絆で繋がっていた俺たちは、やはり誰かに愛情を求めていたのかも知れない。 それが毎日の夜遊びをエスカレートさせていった。 でも、俺達の遊びは所詮まだ子供で、コンビニで話をしたりゲーセンにいったり、ビルの屋上に侵入して朝まで騒いだり……お金はなかったけど、すごく楽しくて、こいつらが居れば俺は大丈夫なんだと思っていたのに。 ー2日前ー 「蘭、話があるの」 「うん」 「ママ達、離婚する事になったから」 いつかこんな日が来るかも知れないと思っていた。 でも、本当は来なければいいとも心のどこかで願っていた。 「ママはもう疲れたの……」 「…………」 何に対して疲れたと言うの? じゃ、俺は? 疲れたなんてとっくに通り越しているのに。 いつも自分の事しか考えていない大人は卑怯だ。 力のない子供はそれに従うしかないんだから。 でも、毎日喧嘩をする両親を見なくても済むなら……といいように解釈するしかなかった。 俺に親なんて必要ない。 愛情なんていらない。 卒業するまで育ててくれればいい。 俺にはあいつらがいれば耐えられる。 今日、みんなに話して泣けばいい。 そんな事をただぼんやり考えていた。 壁にかかった鳩時計が、間抜けな動きで時間を告げていた。 リビングから見える庭は雑草だらけで、その中でさびた三輪車が転がっていた。 それは今までの暮らしを静かに物語っているようで、俺は黙って俯くしかなかった。
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