ー一日目ー

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俺は何も望まない。 離婚するなら勝手にすればいい。 親がいなくても、俺には友達が……… 「今日は引越しの準備をしなさい。明後日、ここを出て行くから」 「え?」 何の話? 出て行くって……… 「おばあちゃんにお願いしてあるから、貴方はママの実家で暮らしなさい」 なにそれ? 「どういう事?」 「ママは仕事を辞めるわけにはいかないし」 「じゃ、俺はパパと一緒に」 「駄目よ!」 「嫌だよっ!引越しなんて嫌だっ!!」 「さっさと用意しなさい」 「ママっ!!」 初めて親が憎いと思った。 喧嘩で子供まで巻き込むなよっ! 変な所で意地を張る意味がわからない。 どうしてママと行かなければいけないんだよ……… 「学校……」 「昨日転校の手続きをしたわ」 「でも、友達に」 「向こうで作ればいいじゃない」 そうじゃない! そうじゃない!! そうじゃない!!! 俺はあいつらと離れたくないんだっ! 他の友達なんていらない。 幸せな家庭の中で育った友達なんていらないんだっ! 「………勝手だよ」 「貴方はまだ子供なのよ?親がいなければ生活すらできないじゃないの」 「…………」 はじめて悔しいと思った。 こんな時だけ、母親面かよ…… 従わせると言うだけのスキルをこんな所で発揮する親が憎いと思った。 みんなごめん…… さよならすら言えなくてごめん。 大好きだったお前らとこんな形で別れる事になるなんて…… もう何もかも嫌だ。 俺はこれから誰に心を開けばいいの? それとも、光すら遮断しているこのうっそうと木々が生い茂る森のように、俺も心を閉ざしてしまおうか? なんて考えてしまったんだ
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