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都会では見た事のないような玄関の前に立ち、母親はチャイムを乱暴に押した。
ドラマとかで観るような和風の玄関。
ドアではなく、木で作られた頑丈そうな……なんて言うのか知らないけど、とにかくガラガラッって横に開けるドアだった。
「お待ちいたしておりました」
………っ!
びっくりした。
「お母様は?」
「リビングでお待ちです」
「そう、行くわよ」
「お荷物を」
「私はいいわ、この子の荷物を」
「はい」
俺は違う意味で驚いていた。
母親は思い切りお嬢様だったんだ。
思い出した……
いつも喧嘩の原因は、お金の事だった。
普通のサラリーマンの父親
母親は店をいくつか経営する社長
いつも喧嘩の理由は、母親の金の使い方だったような……
今更どうでもいい話だね。
広い廊下を歩き、突き当りの部屋までやって来た。
屋敷の作りは思い切り和風なのに、中は洋風という不思議な空間に迷い込んだような錯覚。
リビングに入ると、高そうな絵画や家具やよくわからない置物が並んでいた。
「お母様」
「…………お座り」
「ええ」
苦手なタイプだった。
おばあちゃんなんて呼ぶような人には見えない。
冷たそうな人。
「この子が蘭那かい?」
「ええ、ご挨拶は?」
今すぐ逃げ出したい。
もう嫌だっ!
でも、逆らえる訳もなく……
仕方なく挨拶をするしかなかった。
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